「私たちは、皆様の前で結婚式を挙げられることを感謝し、ここに結婚の誓いをいたします。」
「幸せや喜びを共に分かち合い、悲しみや苦しみを共に乗り越え、暖かな家庭を気付くことを誓います。」
拍手喝采で祝福された結婚式。
ここから僕の新しい人生がスタートした。
・・・5年後・・・
「昨日のドラマのあの女優ってマジで演技下手だよね。」
「顔だけじゃ、若いうちだけだよねぇ~」
「でも、相手の俳優もイケメンだから、並ぶと圧巻だよね。」
たわいもない会話を社員食堂で女子社員としている男がこの物語の主人公「しんじ」である。
地方のサラリーマンの次男として生まれ、専業主婦の母親と兄弟に囲まれ特別な不自由もなく高校を卒業。
大学進学を機に、実家を出て上京。
大学を卒業し、新卒で某メーカーに就職。
現在36歳。いわゆる働き盛りのサラリーマンである。
職歴も10年を越え、責任ある仕事も任されるようになり、プライベートでも結婚し順風満帆に見える彼だが、彼には大きな秘密が2つある。
・・金曜日・・
仕事を終えたしんじは、いつもとは逆方向の電車に乗る。
ターミナル駅から徒歩10分程度の交差点を曲がり、おもむろに小さなバーの扉を開ける。
カウンターだけの小さな店内。
「オハヨー」
小刻みに手を振るガタイのよい男性がカウンターの中からしんじを迎え入れる。
「ボトルでいいわよね?割物はウーロン?」
見た目には似つかわしくない物腰柔らかな対応をするその男性は、坊主に近い短髪に鍛えた筋肉質な身体を自慢するかのようなボディーラインが良くわかるピチピチの服を着ている。
そう、ここは新宿二丁目。
いわゆるゲイバーである。
ガタイの良い男性はこの店のマスター・・・いやママである。
「最近どうなのよ?彼氏と別れてからはっちゃけてるんでしょ?」
ママから声を掛けられるしんじ。
「最近はおとなしくしてるよ。まだ傷心だもん。」
スムーズに答えるしんじは、この店の常連だ。
そう、しんじはゲイなのである。
ゲイとは同性愛者の総称で、日本では男性の事を好きな男性を指す。
日本ではまだまだ同性愛者への理解は低く、家族にも会社でも自分が同性愛者であることは公言していない。
自分がゲイであることをオープンにしているゲイの事をオープンゲイ。
オープンにしていないゲイをクローズドゲイなどということがあるが、しんじはクローズドゲイである。
週末に新宿二丁目などの行きつけのバーに行き、ゲイの男性との親交を深めながら、一般的な社会人とスイッチを入れ替えながら生活を送っている。
これが1つ目の秘密。
もう1つの秘密は、もう気が付いている人もいるかもしれません。
しんじはゲイであるにもかかわらず、既婚です。
妻がいる身でありながら、新宿二丁目に飲みに来ています。
妻には何と言っているのか。家族にも秘密ということは妻にも言っていないのか?
答えはNO
妻はしんじがゲイであることを知っています。
むしろ、しんじがゲイであることをわかって、進んで結婚をしました。
そう、しんじの妻はレズビアン。
つまり、女性が好きな女性です。
しんじの2つ目の秘密
それは、友情結婚をしていること。
しんじの場合は、セクシュアルマイノリティ同士が、利害の一致による結婚を選んだ友情結婚の形である。
この物語は、ゲイである自分と向き合い、日本という国でどう生きていくのが自分にとって良いかに悩みながらも頑張って生きている1人の男とそれを取り巻く人々の記録・・・・。
この記事を書いた人
- セクシュアルマイノリティの女性と友情結婚生活を継続中のゲイ男子。
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